<コラム>COMPUTEX & InnoVEXを理解するためのキーワード(その1)市場は最初からグローバル

240603-06 (1)■キーワードは「市場は最初からグローバル」、「世界中からバイヤーが集まる展示会」、「製品買い付けが目的のトレードショウ」

■COMPUTEX & InnoVEX2025

このコラムは3シリーズでCOMPUTEX & InnoVEXの特徴や見どころを紹介してきた。これまでCOMPUTEX & InnoVEXの開催概要について、次に今年の注目ポイントについて、さらに事前登録と会場までのアクセスについて、シリーズで紹介してきた。ご好評につきコラムを追加して引き続きCOMPUTEX & InnoVEXを紹介していきたい。

追加コラムではCOMPUTEX & InnoVEXの特徴について、次回は日本人ビジネスパーソンが知っておきたい日本の展示会との違いについて、そしてさらに2016年からCOMPUTEXに併設されているスタートアップの展示会であるInnoVEXについて、3回シリーズで紹介していきたい。

視察を予定している皆さんはこのコラムのバックナンバーをぜひ参考にしていただきたい。また、シリーズの最後にはCOMPUTEX & InnoVEX2025を効率よく視察するための「モデルコース」についても紹介したい。ぜひご期待ください。

■COMPUTEX & InnoVEX2025開催概要

会期は5月20日(火)から5月24日(金)まで4日間。会場は台北の「台北世界貿易センター南港ホール」(TaiNEX)の第1ホール及び第2ホール。出展企業数は1,800社、4,800小間。来場者は10万人を予測。主催はTaipei Computer Association/TCA(台北市電脳商業同業公会)とTAIWAN TRADE CENTER/TAITRA(中華民国対外貿易発展協会) 第1ホールの4階にはACER(宏碁)、ASUS(華碩)、MSI(微星)など台湾を代表する大手ベンダーが出展。また今年で10回目を迎えるInnoVEXには国内外から400社を超えるスタートアップが出展。注目を集めそうだ。日本語の「事前登録」のサイトはこちらから https://www.computexonline.com.tw/?userlang=jp

■市場は最初からグローバル

台湾企業がターゲットとする市場は欧米が中心。次に中国や東南アジア市場と続く。最近では発展が著しいインド市場も注目を集めている。規模が小さな台湾国内の市場ではなく、最初からグローバル市場をターゲットとして輸出を前提としたモノづくりを行っている点が台湾の特徴だ。欧米ではどんな製品が求められているか、東南アジア市場やインド市場ではどんな製品が求められているか、それぞれの市場のニーズに合わせたスペックや価格帯で製品開発が行われる。

よくCOMPUTEXを視察する日本人に「今年のトレンドは何ですか?」、「人気の製品は?」、「売れ筋の製品は?」という質問を受けることがあるが答えに困ることがある。COMPUTEX & InnoVEXでは各社ともぎりぎりまで製品の作り込みを行ってくるので、出展の製品情報が事前に公開されないケースもしばしばだ。

もし、「売れ筋の製品」を見たい場合はBC Awardパビリオンをお勧めする。このパビリオンでは過去1年間に発表された製品で一定の評価を受けている「売れ筋の製品」を集めたパビリオンだ。もし、「最新トレンド」を見たい場合は展示会ではなく、カンファレンスやセミナーの聴講をお勧めする。ここでは製品開発の基本的なコンセプトや今後発表が予定されているモデルなどを見ることができる。

ターゲット市場で要求されるニーズやスペックに合わせて製品開発が行われる。会期が始まって実際に出展ブースを回ってみて、思いもよらない製品に遭遇することもある。実際のところ現場で出展ブースを回って見ないとわからない、というのが正直なところだ。

このように事前の情報収集が難しいのがCOMPUTEX & InnoVEXの厄介な点でもあり、同時にグローバル市場向けにどんな製品が出展されるかわからない‘わくわく感‘がCOMPUTEX & InnoVEXの面白いところでもある。

■世界中からバイヤーが集まる展示会、‘クリスマス商戦’がターゲット

海外からの‘バイヤー登録者’はおよそ3万5千人(2024年実績)、これだけたくさんのバイヤーが世界各国から集まる。日本の展示会では‘来場者総数’として10万人、20万人いった数字を発表するケースもあるが、COMPUTEX & InnoVEXでは‘来場者総数’ではなく、バイヤーの‘登録者’の実数を重視。この3万5千人(2024年実績)はという数字は、COMPUTEX & InnoVEXを実際に訪れた‘バイヤー登録者’の実数である。

バイヤーは欧米や日本だけでなく、中国、アジア諸国、南米、中東、東欧、アフリカといった国と地域からもたくさんのバイヤー登録がある。パソコンやその周辺機器、またパーツやコンポーネンツからサプライ用品まで、それぞれの地域のニーズに応じた製品を調達するためにCOMPUTEX & InnoVEXに集まる。

ずばり‘クリスマス商戦’のための製品買い付けが目的というバイヤーも多い。半年後の商材をCOMPUTEX & InnoVEXで買い付けていく。そのため遠くからCOMPUTEX & InnoVEXにやってくるバイヤーは‘手ぶら‘では帰れない。遠ければ遠いほどバイヤーのモノ選びは真剣勝負だ。

日本では近未来の製品トレンドや将来の技術動向を見るために展示会を視察というケースがよくある。しかし、COMPUTEX & InnoVEXはこうした目的ではなく実際に、製品を買い付けていくための展示会である。‘クリスマス商戦’で売れるものは何か、年に一度、この季節にCOMPUTEX & InnoVEXに世界中のバイヤーが集まるのはこうした事情がある。

■製品買い付けが目的のトレードショウ

COMPUTEX & InnoVEXの特徴はずばりトレードショウであること。来場者の目的は単なる‘情報収集’が目的ではなく‘商談’が目的の展示会である。日本の展示会のように、ブースを回って出展製品の情報を収集し、パンフレットやカタログなどの資料を集めて、「詳細は社に帰ってから検討…」、「後日、改めて連絡…」ということがない。通路を歩きながらブースを覗いてみると、スペックの確認、価格交渉、デリバリー、サンプル発注など、高角砲を飛ばしながら具体的な商談が実際に行われている光景をしばしば目にする。

ブースだけではなく、会場ではマッチングイベント、プレゼンイベント、個別商談ミーティングなどが開催される。展示会はであって当たり前のような気がするが、実はここまで具体的な商談を展示会の現場で進めていく展示会は日本では心当たりがない。

ある意味、これは日本にはない形の展示会である。東欧、中東、アフリカ諸国など遠い地域からやって来るバイヤーは‘手ぶら’では帰れない。この展示会は‘商談’の場あって、製品を買い付けていくための‘トレードショウ’なのである。

誤解を恐れずに言うと、こうした中で日本人は嫌われる存在だ。それは商談ではなく情報収集を目的とした来場者が多い。つまり、製品を見るだけ、写真を撮るだけ、パンフレットを持ち帰るだけといった行動。情報収集と資料を集めだけでブースで‘商談’をしていかないのである。一方、他に国から来るバイヤーの多くは‘商談’をしていく。

よくCOMPUTEXを視察する日本人に「今年のトレンドは何ですか?」と聞かれるが答えに困ることがある。思わず「トレンドとは人に尋ねるものではなく、製品を買い付けに行く‘あなた’が作るもの」と答えたくなることがある。この展示会は‘商談’の場あって、製品を買い付けていくための‘トレードショウ’なのである。

製品トレンドや技術動向の情報収集ではなく、いま売れる製品を探す場が展示会なのである。情報収集の場ではなく、製品買い付けの場であること、これがCOMPUTEXの最大の特長だ。

 

※レポートに掲載した内容に関して詳細はTCA東京事務所までお問い合わせください。連絡はe-mailにてbridge-jp@asia-net.bizまで。またはTCA東京事務所担当吉村(携帯:080-7046-7888)まで直接お問い合わせください。

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